槍ヶ岳から笠ヶ岳縦走
2012.08

その4

 8月25日

とりあえず、4時間寝たし、ここまで来て笠ヶ岳に行かずに下山してしまってはあまりにも寂しいし、きっと後悔するはず。そうだ、これはきっと試練なのだと、勝手に都合よく解釈して自分を奮い立たせた。それでも、最終判断は分岐のところで決めようと思いながら、朝食のラーメンを食べた。幸い下痢もなかったが、足の指が昨日に引き続き痛かったので、予備用で持っていたモンベルの靴下をまず履き、その上にウールの靴下を履き、靴紐を再度結び直した。

5時15分にテントサイトを出発。弓折岳の分岐までの道のりで下山を判断することにしていたが、どうやら大丈夫そうだ。体も3日目となると山慣れしている。下痢の西鎌尾根を振り返りながら、よーがんばったと自分を褒めつつ、今日の目標を笠が岳キャンプ場に設定した。


前日の夜に槍ヶ岳の頂上から撮影したデジカメ画像を拡大しながら、地図の等高線と重ねて読み合わせをしておおよその行程のシミュレーションをしておいた。大ノマ乗越から笠が岳キャンプ場までの小ピーク等を数えながら合計9つの小目標を設定した。2662地点がNo.1。No.2が秩父平のカールの登り切ったところである。さあ、踏み出したら笠新道の合流地点までエスケープは無理だ。覚悟を決めた。大げさだが、いまの自分にはそれくらいの気合が必要だった。(恥)



体が出来てきてからか、今日は楽だ。途中暑くなってきたので、タオルで朝露を拾い頭にかぶると稜線を流れる風で冷やされて非常に気持ちが良かった。秩父平のカールは遠めに見るとゲー!という登りに見えるが実際に見てみるとそれほどではなくて、むしろ道沿いに花がたくさん咲いていて、これを見て楽しまなければ損と言わんばかりに咲いていた。カールを上り詰めると稜線歩きになり、笠ヶ岳も良く見える。


この後、笠ヶ岳の山頂はガスで隠れてしまったが、シミュレーションしていたこともあり、ニセピークにだまされることもなく、キャンプ場に11時10分にたどりついた。テントはなく、まだ、誰もいなかった。なんとかここまでたどりつけたことにひたすら感謝。ひとりでガッツポーズをした。水場に近い平らな場所を選んでザックを置いて一休み。小屋はキャンプ場から歩いて20分ほど上部にある。これは正直痛い。しかも、トイレがキャンプ場にないのだ。小屋のトイレを使ってくれとのこと。絶対どこかで隠れてやってる人いると思うけどナー。

受付ついでに何か食べようかなと思ってメニューをみたが、食事はラーメンんとうどんの2種類のみだった。ばんりゅうラーメンと名前のついたラーメンを頼んだ。麺は乾燥麺かな。まあ、贅沢言わない言わない。



小屋から下りてテントを設営し、3分ほど下降したところにある水場に向かった。雪渓からの水は冷たくて小屋で買ったビールよりも正直うまかった。水場で笠新道を4時から登ってきたという夫婦とお話ししたが、昨日は駐車場もすぐに満杯になって混雑していたとのこと。笠新道もけっこうしんどい道だったようで、明日下るだけにちょっぴり不安。ひざが悪いわたしは下りが特に苦手。コースタイムの1.5倍を想定した。

今日はもう笠が岳には登らず、明日ご来光時に登ろうと決めて、ビールを飲んでシュラフに入ってうたた寝をしていたが、目が覚めるとガスも晴れている。おー、ひょっとしたら運がよければ景色も拝めるかなと登ることにした。山頂からは穂高の峰が雲間から見えた。夏雲がぐんぐん上昇していくのも見えて非常に満足だった。上からは新穂高温泉も良く見える。歩いてきた槍からの道のりが見えるのがうれしかった。


刻々と変化する雲は眺めていて飽きることがなかった。


まるで映画「インディペンデンスディ」の宇宙船が登場するときのような雲を見ることができた。


夕食は昨日のオーマイのトマトが美味しかったのでカレーで食べるつもりだったマカロニとサラミを変更して前日と同じ味にした。2パック入ってるので、これは山向きだと思う。2日続けてトマト味を食べたが、これは自分の好みにも合った。

夜は谷からの風でテントは揺れた。ベンチレーターから覗いてみると月明かりで笠ヶ岳が綺麗だった。ひさしぶりにろうそくを取り出してテントの中で付けてみた。いまどき、ろうそく使ってる人なんているのだろうか。


9時すぎにシュラフにもぐりこんだが、やはり眠れない。明日の笠新道への不安だろうか。それともひさしぶりの山でやはり興奮してるのだろうか。まあ、いいやと思いながら目を閉じているといつの間にか眠りについた。夜、目が覚めて外をみると目の前に槍穂高の稜線がはっきりと見え、空にはオリオン座が輝いていた。明日も好天だ。

その5へ続く

   
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