六甲ゴロゴロ岳周辺ハイキング
2007.02.03
チョコレートドーナツに誘われて

 2月3日
プロローグ

ひさしぶりに金曜日の晩に嫁さんと借りてきた映画を二本見る。終わってみたら夜の3時。目が覚めてみたら朝の9時。前日の天気予報では寒くなると聞いていたので、土曜日は家でごろごろかなと思っていたがカーテンを開けてみるとひさしぶりの雲ひとつない空が広がっている。これはどこかにでかけねばならぬ。

娘に山に行こうかと誘うと「いやだあ〜。しんどいんだもん」とそっけない返事。困ったなあという顔をすると「チョコレートドーナツが食べられるのなら行ってもいい」と条件付きの承諾が。実は昨年9月17日に六甲の風吹岩に連れて行ったのだが、子供には厳しい道のりだったこともあり、ご褒美に芦屋駅前にあるミスタードーナツに連れて行き、チョコレートドーナツ2個+オレンジジュースを奮発したのだが、どうもこれが強烈な印象として残っているようで、先日「パパと山に行った絵」という本人の説明付きの絵手紙にもキチンと丸いドーナツ2個が書かれていたのである。娘の条件付き要求を呑むこととし、さっそく準備に取り掛かる。

ヨガにでかけるという嫁さんにおにぎりを握ってもらっている間にどこに行こうか考える。問題は最後にドーナツ屋にたどりつくことからルートを検討しなければならない点なのだ。ショップ一覧で探してみると予想以上に少ない。いい形で我が家にたどりつくルートにミスドが芦屋以外に無いのである。となるとやはり終着点は芦屋のミスド。てなわけで一番てごろと思われるゴロゴロ岳に行くことにした。

ゴロゴロ岳へ
ゴロゴロ岳とは565.5mの標高からつけられた名称であり、古くは剣谷山とよばれていたらしい。昔は有人測候所があり、「人間灯台」というこれまた凄い俗称がつけられていた剱谷森林気象観測所があった。
家を出たのが10時。ここから阪急芦屋川駅まで歩く。歩きながらせっかくだからバスに乗らずに上まで行ってみようと考え、芦屋川駅ではバスに乗らず、そのままヨドコウ迎賓館の横の坂道を登っていく。結構な坂道だ。いままでバスで何度も通っている道だが、歩いてみると新たな発見がたくさんある。娘はいったいどこまで散歩するのか、何度も聞いてくる。山へのアプローチという概念はまだ無いようだ。
 寂しいおじさんのような背中の娘。不安なのか?

水車谷のバス停が見える手前で、現在地を確認しようと地図を探すが、ありゃ、無い・・・。自宅に忘れてしまったようだ(汗)せっかく非常用のランプやラジオ、食料を詰めたのに肝心の地図を忘れてしまった。まあ、頭に概念図は入れておいたので、このまま行くことにする。やばそーなら戻ればいい。水車谷のバス停を過ぎて坂を登ると登山口に到着。山から海に至る距離が短いこの地域は昔からその急勾配を利用した水車がたくさん設置されていた。水車谷の名称もそのなごり。詳しくはこちらの発掘調査のページを。

登山開始
メジャーコースとは言いがたい山道だけに整備はあまりされていない。誰とも会わない予感。こういうときは感性が研ぎ澄まされてきて、物音にだんだん敏感になってくる。都会生活では意図的に遮断している音や感性のスイッチが入っていく過程がまた登山の楽しみのひとつとも言える。



登山口からすこしあがったところに2軒の小屋があった。何をする小屋だろう。道路からいくぶんも離れていないのになんだか不思議なかんじだった。小川を渡り、狭い道を登っていく。大きな石がところどころにある道は子供には歩きにくい。これは頂上までは行けないだろうなとこのとき、思った。登りにくい道は下りも大変。特に子供は下りが時間がかかる。


前山公園方面へ足を進める。頭にこの分岐は入っていなかったが、地形図から考えると前山公園のほうが展望が楽しめるかなと思ったからである。疎林を歩きながら、娘はさかんに「もののけ姫」の話題に触れてくる。どうも山=もののけ姫らしい。タタリ神はいるの?シシ神の森はどこにあるの?こればっか。神さまはきっといるし、山の神は昔から女性と言われていたことを教えるが果たしてどこまで記憶に残ることやら。

 

前山との分岐からゴロゴロ岳に向かう道は尾根に載った稜線道。木立の間から下界の町が見える。自宅からバスにも乗らず、ここまで自分の足で歩いてきたことは凄いことだよと褒めると娘も随分とご機嫌になった様子で、どんどん、先頭で岩交じりの道を歩いていく。このところ、すっかり山歩きが上手になって登りに関しては後ろで見ていても安心な、安定した歩き方が出来るようになった。

目指すは小ピーク
鉄塔が見えてくると小ピークがもうすぐそこ。ゴロゴロ岳山頂は展望が楽しめないことは知っていたし、このまま進んでも戻る時間を考えると頂上までは難しいことから、まずはこの小ピークを目指すことにした。

 
真中に見えるのが西宮のシンボル(?)である甲山。ここから西宮方面がよく見える。

こんなかんじの岩がゴロゴロした道を登ると小ピークに到着。子連れでいくにはなかなか登りごたえのある山。こりゃ下りが大変だなあ。とはいえ、娘の安定したのぼり方に見とれていて、ついついイバラの上に手を置いてしまい、チクリ!ぎゃあ!手の平から出血してしまった。

娘から「きちんと手を洗って消毒してばんそうこうを貼るのよ」とまるで先生のように指導をしてもらった(笑)大きくなったもんだ。





ランチタイム
小ピークでシートを敷き、嫁さんが作ってくれたおにぎりをほおばる。娘は昆布入りのおにぎりが大好物。これにアンパンマンの卵ふりかけを少しずつふりかけながら食べるとこれがおいしいのである。熱い番茶を飲みながら、展望と食事を楽しんだ。六甲なのに誰とも会わない。これがまたいい。僕は山は人間が生き物としての感性のいくぶんかを取り戻す場所だと思っている。ハイキングでも山に入る以上は同じ。それを意識するには人とは会わないほうがいいし、会う人が少ないほど、また出会ったときの「こんにちは」と交わす言葉には安らぎが込められる。それゆえに登山しながらラジオをでっかい音をかけて登るおっちゃんの行動には理解出来ない。

 
木立の中から東お多福山が見えた。あちらは人でいっぱいだろう。目指すゴロゴロ岳は青い空に浮かんでいるが時間はすでに1時をまわっている。地図を忘れたこと、この道を子連れで歩いても予想より頂上に立つには時間がかかることを考え、山頂は諦めることにする。また、くればよいのだ。娘にとっては展望よりもチョコレートドーナツだし、僕も自宅から歩いてここまで来たことで、十分満足できる材料が出来た。

山を下る
下り道は予想以上に子供にとっては険しい道のりとなった。
まず岩場の下りは子供にはしんどい。前向きには下りることができないし、視界が狭いから後ろ向きに下りようとしても足をどこに置いたらよいのかわからない。なんどか、背負って岩場を下る。さらに落ち葉の積もった下り道はすべり台のようで、しっかり足をおかないとつるりと滑ってしまう。

下り道で登山者と会う。奥池方面に行きたいんだけど道が分からないと尋ねられた。見せられた地図はYahooの普通の地図。登山道がまったく書かれていない。印刷してもってくるのなら、概念図も一緒にもってくればいいのになあと思いつつ、道を教える。「誰にも会わないから不安だ」とつぶやいていたのが印象的だった。


小さい小川を渡るところで、時計を見るとちょうど14時30分。水車谷のバスの時間は10分と44分。これなら帰りはバスを使えそうだとすこし早めに歩く。バス停につくとちょうど43分。娘があといくつ数えたらバスが来るのと聞くので60だよと答え、娘が6を数えたらバスが来た。娘から「6やんか!」と突っ込まれる。(笑)

チョコレートドーナツへGo!
JR芦屋駅で下車し、目指すはミスド。しかしあいにく店内は満員。まっている人が3人ほどいる。ありゃりゃ。このまま待っていても時間がもったいなあとお店でオレンジジュースを飲むことを楽しみにしていた娘と説得してお持ち帰りにすることに。そのかわり、好きなの選べと選ばせたのがこの2個のドーナツ。コテコテですわ。


 

コップ2杯の牛乳を一気に飲みながら、チョコレートドーナツをほおばる娘。今日どこに行ったんだっけ?と聞くと「ドーナツ屋さん」と答えが返ってきた。あらー、やっぱりそうか。まあ、この歳で山が大好きなんて言ったらそっちのほうがおかしいわなと思いつつも、チョコレートドーナツの効力が続くうちは山遊びに付き合ってもらおうとたくらむ父親であった。
     
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