山ではこれを食べなければならない!という物は無いけれど、保存や重量などの様々な制限の中でいつも同じメニューにしがち。そうなると「またカレーかよ〜?」と不満も続出。そうならない為にも、日ごろの研究が大切です。今回はその国の国力とその国の研究技術がもろに分かると言われる軍隊の装備のうち、携帯食料についてヒントをもらいましょう。 |
今回のテーマは” レーション ”。レーションとは学生時代ワンゲルで昼飯(行動食)のことを指していたが、実際はアメリカ軍が開発した野戦食(兵隊が戦地で食べる食事)のことである。たぶんこの名称を使っている山岳団体は多いのではないかな? |
飯盒炊飯中の旧日本軍 |
1.Cレーション
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Cレーションとは第二次大戦勃発直後アメリカで開発された 軍隊用の野戦食 のことである。基本は 6個の缶詰で構成されておりそのうち3個は以下のような野菜と肉の組み合わせであった。 | ||
缶詰の中身 |
詳細・コメントなど |
山での応用を考えると |
ミート アンド ビーンズ |
いんげん豆 と牛肉 |
いんげん豆は使ったことないな・・・ |
ミート アンド ベジタブル |
野菜入りのシチュー |
これはシチューと考えればOK |
ミート アンド ベジタブル・ハッシュ |
ひき肉と野菜 (相当まずかったらしい) |
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2.Kレーション |
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第二次大戦中にアメリカで開発された野戦食。元々空挺部隊(パラシュートで空から兵隊が降ってくるあれです)用に開発されたらしい。防水処理をした段ボール紙に包まれており、3食分にわかれていたそうだ。ちなみにお昼ご飯は以下のようなメニュー構成。 | ||
箱の中身 |
コメント |
山への応用 |
プロセスチーズ |
これは登山でも使えそうだけど当時は缶詰だったらしい |
プロセスチーズ は汎用性があるので持参すべし |
クラッカー×2包み |
これも登山で使えるそうだけど肝心な時に砕けていそうだな。 | パッキングに注意
すれば楽しめるはず |
角砂糖×3個 |
これも登山で使えそうだが・・・ |
粉末の方がかさばらない |
チューインガム×1 |
これはリラックス用かな? |
あめちゃんのほうがよさそうだ |
粉末レモン |
当時のものは 最悪にまずく、 もっぱら兵 隊達は食器磨きに使用していたらしい。 |
やっぱし抹茶なんかのほうがいいぞ! |
キャンディ |
ブドウ糖が添加 されていたらしく、最高にまずかったらしい。上官に隠れてこっそり捨てていたらしい |
味がいろいろあるアメでいいでしょう。しかし食い物を捨てるだなんてさすがアメリカ軍。日本軍にはない発想ですな。 |
3.MCI(Meal Combat Individual) |
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朝鮮戦争後に開発された野戦食。一個の箱に缶詰が3〜4個、その他マッチ、チューインガム、コーヒー、砂糖、クリーム、トイレットペーパ等が含まれていたらしい。(どこでも食えるけど重たいのが難点)メニューの一覧表が参考資料にあったので掲載しちゃいます。 | ||
メニュー一覧 | 詳細・コメントなど | 山での応用を考えると |
スパイスソース付きビーフ
クラッカー、フルーツキャンディ ピーナッツバター |
ビーフはどのように調理してあったのかな?でもなんだかおいしそう | お肉を下界で調理して現地で焼くというパターンで登山に使えそう |
シーチキン クラッカー、フルーツキャンディ ピーナッツバター |
これはちょっと味気なさそう | シーチキンは 朝飯に使えそうである |
ハムエッグ クラッカー、フルーツキャンディ ピーナッツバター |
ハムエッグを食べられるなんて幸せそう! | これはオートキャンパーにお任せかな |
豆とフランクフルトソーセージ
クラッカー、フルーツキャンディ ピーナッツバター |
豆はやっぱりあの”ポーク and ビーズ”の豆なのかなー | 豆の調理方法をマスターするといろんなバリエーションを楽しめそう |
豆とミートボールトマトソース味
クラッカー、ジャム ココア、ケーキ |
ミートボールというのは手軽でおいしいそう! | ミートボールは市販のパック が使えそう |
ビーフステーキ クラッカー、チーズスプレット フルーツ、スィートチョコレート |
これはすごいけど、味は?サイズはでかそう | これは厚切りハム で代用かな(寒) |
*ピーナッツバターは栄養価も高そうでこれは使えそう。ただし間隔をおかないと日本人には飽きがきそう。
4.陸上自衛隊 | ||
最後に日本軍はというといわゆる行動食の中心は今もある” 乾パン”であり、これは現在の自衛隊も同じ!なのだそうだ。
アメリカの場合パンのかわりにクラッカーとなっているみたいだが、日本人は やっぱり飯 。そんなわけで自衛隊でもたくさんの種類のご飯ものを用意している。 |
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缶詰 の種類 | 詳細・コメント | 山での応用を考えると |
鳥飯 | いわゆる釜飯のような感じ? | 市販の釜飯パックに具を加える といいかも |
赤飯 | もち米でおなか満腹かな | 山で赤飯 食う奴はみたいことないなー |
しいたけ飯 | これも釜飯もどきのような気がする | しいたけは生を持って行きたいが腐るか・・・ |
五目飯 | これももち米かな? | 市販の炊きこみ用の具で代用かな |
たくあん漬け | 大変おいしく人気の一品らしい | これは山でもおいしそう |
味付けハンバーグ | なんかあまりうまくなさそう | レトルトハンバーグは重い し、味気なさそう。 |
味付けコンビーフ | 白米のおかずにはいいかも | マヨネーズやコショウ でUpgradeできそう。 |
味付け牛肉 | スーパーで100円で売ってるタイプのような気がする。 |
缶詰よりも事前に調理して入山したほうがよさそう。やっぱ大和煮かな。 |
鶏肉野菜煮 | どんな味付けなんだろ。おそらくはしょうゆベースの味だろう。 | チキン入りの野菜スープと考えれば冬山で使えそうだけど・・・。 |
5.旧日本陸軍 | ||
旧日本陸軍の野戦食 の一部を参考までに載せます。何かと現地調達が多かったらしいけど一応開発はしてたみたいね。 |
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メニュー一覧 | 詳細・コメントなど | 山での応用を考えると |
圧搾口糧 | 膨張玄米(爆弾アラレと呼ぶ)を主食とし、副食として 乾燥した鰹節や 乾燥梅干 、砂糖を別々に圧搾して缶詰にしたもの。昭和13年に制定。 | 鰹節はなにかと使えそうだが乾燥した梅干はなんだか食べたくないなあ。 |
小型乾パン | 硬度を減らし、かみやすくした乾パン | 乾パンは今でもOKですよね。でも山ではあまりたべたくないなあ。 |
軍糧精 | 粉ミルク、酵母、ぶどう糖を配合して圧搾 | クリープ&砂糖で代用かな? |
携帯粉味噌 | 乾燥味噌にワカメ、調味料を紙袋に入れたもの | 乾燥ワカメはいろいろ使えそう。 |
携帯味醤 | 味噌、醤油 、調味料を混合し、噴霧式乾燥機で乾燥粉末にしたもの | 醤油のパックはときどき使うかな |
携帯スープ | 豆、肉などを配合し、乾燥粉末にしたもの | これは市販もしくはフリーズドライで代用 |
携帯甘酒 | 甘酒糀を主に砂糖、飴、有機酸、しょうが、膨張米などを配合したもの | 冬はいいかも!でも乾燥版はあるかな?探してみようっと。 |
簡易携帯副食 | いまでいう”ふりかけ” | 停滞食もしくは食欲がないときにいいかも。 |
熱量食「第一線」 | 粉乳、水飴、ブドウ糖を主成分とした非常食 | いまでいうカロリーメイトのようなもの。水飴って久しく食べていないけど意外といいかも。 |
なお、軍隊のメシ関係はあまり書籍がありませんが、よーく探すと少しだけあります(ニヤリ) ひそかに持ってます。(^^)保存食の歴史もかなり面白いです。へえ〜連発(^^)でした。 |
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おすすめ度の平均:
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保存食品開発物語 Sue Shephard 赤根 洋子
文芸春秋 |
子供のころ、移動図書館で借りたあのグアム島に潜んでいた横井庄一さんの島での生活を書いた絵本の印象が強烈で、もう一度読みたいなと思って探しているのですが、見つからないんですよね。本のタイトルはもちろんおぼえていない・・・。 |
レーションと軍隊のメシ関連おすすめLINK | |
★THE戦闘糧食 | 最近かなり有名になったサイト。写真の専門だけあって掲載されている画像がとても綺麗。海外の珍しいレーションも収集されています。 |
★買ってみよう、味わってみよう戦闘糧食 | なんとここの管理人さんは女性なのだ。非ミリタリーマニアがここまでできるのか!と感心してしまう充実の内容。見終わったころはネットで注文してるかも。 |
★自衛隊 戦闘糧食 | 自衛隊の戦闘糧食のレポートが載っています。日本の自衛隊は下記のりょー伍長の説明にあるようにかなりウマー!!らしいです。 |
★再現!大正・昭和の味 (栃木県護国神社) |
作り方を画像で説明している秀逸のサイトです。昭和6年に発行された、『軍隊調理法』という本に基づいて料理されてます。「帝国陸軍戦場の衣食住」と合わせてみることをお勧め。 |
自衛隊の缶飯(味付ハンバーグ)ととり飯の缶レーション写真を送っていただきました。味付けハンバーグの缶切部分には「10円玉で外して下さい」の指示があります。その後、とり飯を開けた写真も頂戴しました。缶もあわせて420g(蓋抜き)で、かなり食べ応えがあったとのことです。なお、入手ルートは極秘とのこと(笑)。以前頂戴したりょー伍長レポートによるとパック型の2型に移行してるとあるので、かなりダブついているような気がしますね。どっかでセールやってくれないかなあ。 |
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とり飯でございます。それにしてもなぜ平仮名?? | 「あたためればさらによい」といかにも軍隊チック? |
とり飯とはこういうものだ!あ、味のこと聞くの忘れてた! | 味付けハンバーグは缶切り付き。缶切りには10円玉で外せ と書いてあるけど、自衛隊員が10円玉をわざわざ出して使う とは思えないのだが・・・。PL法の影響かな。 |
サバイバルゲームサイトを運営している「りょー伍長」からような補足のコメントを頂戴しましたので掲載させていただきます 。ありがとうございます。(^^)! | |
私、サバイバルゲームチームを運営しているもので、
りょー伍長 といいます。 「軍用レーションマニア」なため、山男さんのHPに引っかかり、以来ひっそりと閲覧させていただいています。 そこで、レーションの項目で、味がわからないものやどんなものかわからないもの が、どんなものなのかあるていどお答えできると思います。僭越ではありますが、空いているところや、その他の情報をご提供できればと思い メールしました。 以下に、少し詳細を記させていただきたいと思います。 缶メシ(自衛隊糧食T型)には、10以上のメニューがあり、一食が主食・副食・漬 物の三缶で構成されます。 飯缶は、白飯・赤飯・鳥飯・五目飯・シイタケ飯があり、やく2合分(これでおなか をふくらますとか)の飯が入っています。飯缶の欠点は沸騰した湯の中で25分間暖めないといけないことです(でないと、硬 くて食べられたもんじゃないです)。 副食缶は、鶏肉野菜煮・牛肉野菜煮・鶏もつ野菜煮・マグロ味付け・コンビーフベジ タブル(味付けコンビーフとされているのはこれではないかと)等があります。味ですが、ほとんどが(コンビーフ除く)「しょうゆ」をベースに、濃い味付けに なっています。米を大量に食わせるためだとか。 山男さんが、疑問に思われていた、鶏肉野菜煮ですが、あれは美味いです。原材料は、 鶏肉・さといも・ごぼう・たけのこ・にんじん・しいたけ・しょうゆ・砂 糖・水あめ・食塩・アミノ酸等調味料です。基本的に、民間業者がおろしているので、同じ物がスーパーなのでも手に入るのでは ないかと思います。 ※鶏肉野菜煮は「日東食品製造KK」です。 漬物缶は、たくあん漬・福神漬けがあります。たくあんは一番人気で、なんと、缶の厚さと同じ厚さのたくあんがゴロゴロっと入っ てます。 最近はパック式のU型に移行しており、缶メシは使用されていません(重いし)。 それでも、配給の形式は、米軍と違い、副食セット1+主食パック×2(但し、副食セット「ビーフカレー」で主食パック「鶏飯」「カニチャーハン」なん ていう悲惨な目にあうこともあります)を「先着順」で配られます。これもお湯で温める羽目になります。(アメリカのようにヒートパックを試作中と か) 私はかなりの量のレーションを保有しており、もしよろしかったら、資料としておと どけできますが、缶の場合賞味期限はかなり切れてます(笑)私は平気で食べますが。 因みに、自衛隊糧食はNATOレーションコンテストでダントツ一位を獲得した実績を持 ちます。 なぜなら、装備の更新は遅々として進まないのに比べ、食料問題に関しては恐ろしく 早い速度で、改良が進んでいるからとか。以上、いらぬお世話の軍用レーション話でした。 |
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補足をしていただいた御礼と共に質問をしましたところ、回答をいただきました(^^)! | |
ご質問等にお答えさせていただきます! > 25分ですか!それは意外と長いですね。沸騰するまでの時間を考えると > 手軽に食えるとは思えないですね。一食が3缶なんですか。 > 登山の場合はすべて背中に背負うので重そうな感じがしますね。 昨今の軍は機械化が進んでおり、そのものを持って行軍することはない そうです。 缶飯自体も食べることは少なく、ほとんどが食事車(野外炊事一号)作った食事か、 最寄の駐屯地で作ったものを運搬してくることが多いそうです。 缶飯も、実際には個人で携帯することは少なく、食事車で人数分暖めて(演習中に暖 めておく)から配られるそうです。 自分はたまーに、持っていって食べます。しかし、重いんです。 サバゲの装備ももって山を登るので。(しかも暖める水とコンロが必要になりますし ね) それに缶詰となるとゲームをする前に果ててしまうんで・・・もっぱら、米軍のMREをあけて必要なメニューだけ選んで持っていくことが多いで す。自衛隊糧食はもっぱら自宅用です。 > ※鶏肉野菜煮は「日東食品製造KK」です。 > おお、そうなんですか!それは知りませんでした。ちょっと探してみます(^^) ほかには布袋フーズや、日本ハムなんかが卸してます。 特に、解りやすいのが、2型(パック)の「焼き鳥」です。布袋フーズの缶詰型のと全く同じです。 粉末スープなんかは、永谷園です。パッケージはきちんと自衛隊仕様になっているのですが。 > え?先着順なんですか?あとで隊員同士で交換ってことになるのでしょうか?? > カレーを鶏飯にかけるのは堪忍してほしいなあ〜。 好みに合わせて選べるという理由らしいですが、争奪戦に敗れると悲惨らしいです。 ドライカレーにカレーというのもあるそうで…(笑) ですが、余裕があるときはきっちりメニューがきまっているそうです。 > ちなみに朝、昼、晩とも同じような形で配られるのですか? > 登山の世界ではお湯で温めるものというのは、例えば200gのレトルトカレーを例 > に取ると、200gを背負ってお湯で温めても200gしか摂取できないわけです。そこ > でお湯で量をふやしたり(水分を取るという意味もありますが)して少ない、軽 > いものをふくらます発想になります。この観点から見ると軍隊の食料というのは > あれ?という感じですね。 基本的に昼のみの場合が多いそうです。実際、有事になれば三食配られると思いますが、 平時は演習地での食事のみに使用されています。缶飯はそろそろ賞味期限が切れるもの が多いということもあり、宿舎の談話室などに、夜食として置いてある場合もあるそうです。 なぜ、軍隊での食料がお湯で増やしたりするタイプ採用されないか、 その理由は、 「戦場ではきれいな水(飲める)が確保できないことが多い 」からだそうです。 さすがに、アルファ米などに泥水は突っ込めませんもんね。 ヒートパックならば、水分なら汚かろうが、ジュースだろうが温めてくれるので、 レトルトタイプを利用するようです。 それに10キロ20キロ背負うのでもう200グラムくらいいいかってことなのかも しれませんね(笑) > 情報本当にありがとうございます。レーションのデジカメ写真があれば見てみた > いですね。それにしても自衛隊のメシはうまいってことなんですね(^^)個人でも > 購入できるというのは知りませんでした。 デジカメ写真を探してみましたが、自衛隊の中身のはありませんでした(^^; 外観なら、ありましたので添付します。今度食べる時撮って置きたいと思います。 あと、個人では購入することはできません(^^; 手に入れるには、 軍用品払い下げ店で購入する(ただし、賞味期限は切れている)、 オークションを使う、 自衛隊の知り合いに貰う。基地祭りなどで、隊員からもらう。 などがあります。 しかし、米軍などと違って、払い下げ店で手にいれることは自衛隊のものは難しいで す。米軍のはすぐ手に入ります。 ではでは、またご質問等ございましたら、お気軽にどうぞ! P.S 私がレーションを食べる際に参考にしている本があります。 「「戦闘糧食の三ツ星をさがせ!」大久保義信・著」という光人社からでている本で す。 かなりおもしろいので、もし本屋で見つけたら立ち読みでもしてみて下さい(笑) |
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<参考文献> ・アメリカ陸軍教本完全図解マニュアル ・別冊一億人の昭和史 日本陸軍史・陸軍少年兵・陸士、陸幼 |