立山から槍ヶ岳単独行 1996 


【日時】1996年8月2日〜8月9日

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【山行日記】

<8月2日(金)>
仕事をはやばやと片付け、小幡を20:30のJRバスに乗り、出発する。ザックは前日にアルファ米やレーションを大量に間引きしたにもかかわらず重く肩に食い込む。しかしこの2週間めずらしく夜10時から11時まで毎晩トレーニングをしたから体力面ではなんとかなると自分にいい聞かせる。JR米原駅でサンダーバードが来るのをひたすら待つが、おいらのまわりに酔っ払いのおっさんがうろついて気になって仮眠できない。電車がやっときて指定席に座ると今度は横には子供を抱いたおっさんが座っており、その寝ている子供の足が時々私を蹴るのでこれまた眠れない。こんガキャーと叫びたいところである。こんなことなら酒でもくらって乗りこめばよかった。

<8月3日>
このサンダーバードは立山まで乗り入れしてくれるため、富山からあのトロい電車に乗らなくて済む。ケーブルカー、バスと乗り継ぎついに室堂に到着。さあ、もうあとには引けないところまできてしまった。軽く体操をしたあと、出発。ペースがつかめないので前をあるく登山者グループをペースメーカーにさせてもらう。1時間後一の越に到着。玉のような汗がこぼれおちてくる。浄土山の上りと遠方に本日の幕営地の五色が原が見えたときは「もぅやめようかな〜」「止めて立山周辺で遊んで帰ろうかな」と悪魔のささやきに襲われたが、なんとか気力でふりきり、五色が原に到着。
室堂は雪でいっぱいだ 鬼岳を下る 五色ヶ原は遠い

テントサイトは残雪でまだ半分埋まっていた。風が吹くと雪の冷気がテントまで流れてきて意外と寒かった。はやばやとカレー雑炊を食べ、8時頃には就寝する。ぐっすり寝た。

五色が原キャンプ場

<8月4日>
朝3:50分に起床、テントを空けてみると外は濃い霧で覆われている。視界は10mほどだ。木道を頼りに小屋の横まで歩く。霧と風のため前が良く見えない。ゆるやかな上りをぐんぐん登っていくと越中沢岳に到着。エアリアマップには4時間かかると書いてあったがこれは間違いのようだ。ここから小ピークを3個越え、スゴ乗越のテントサイトに到着。今日もくたくた。
越中沢岳が姿を現した 夏の雲 霧が晴れ明日の行程が見えた!遠い!

スゴ乗越小屋は雪のため、食堂が半分つぶれていたがそのまま営業しているようだ。ここのトイレで自分の顔を3日ぶりに見る。すでに東南アジアの人くらい日焼けしてる。しばらくすると天候が回復し、明日の薬師越えの山々が霧の中から垣間見える。「あー、見るんじゃなかった」と後悔。今日は夜から雨らしい。明日までもちこさないことを祈り今日も早めに就寝する。

<8月5日>
4:00頃起床する。雨がパラついているるのスゴ乗越小屋でトイレをかりようとおもったがすでに先客があり、しかたなく外でふんばる。雨のなかの●●●はいつもつらい。今日は第一の難関薬師越え、山頂まではひたすら上りである。
間山を振り返る 雲間から頭を出す剣岳 北薬師岳の稜線

間山を越え、小ピークを越すとついに雲の上にでる。ふとふりかえれば剣岳が雲間からその頂きをのぞかせている。これでこれまでの疲れが一気に吹き飛んだ。太郎平から有峰へ逃げ出すという悪魔のささやきはクリアする。
薬師岳のなだらかな稜線 ついに薬師岳の山頂へ到達 薬師沢から望む黒部五郎岳

8:30についに薬師岳の山頂に到達。1時間ほど絶景をたのしんだあと、薬師峠へ向かう。今日の薬師峠はひとでいっぱいだ。テントの間隔もほとんどなく昨今のアウトドアブームを見せつけられる。洗い場にいくとなんとカラスがたくさんいる。なぜ?と思いながら近づいてみると生野菜がたくさん捨ててあるではないか。インチキキャンパー達のマナーの悪さに閉口しつつ、「拾って食べちゃおうかな」と思った自分の野菜不足と三大欲求の怖さを痛感。
 

<8月6日>
朝の2時ごろからまわりがザワザワするので眼がさめた。「堪忍してくれー、もう少し寝かせろ!」とさけびだいところだったが多勢に無勢、あきらめてシュラフから体を起こしカレーウドンを食べる。5:00に出発し、太郎平小屋で名物ラジオ体操?にとびいり参加して体をほぐす。今日も黒部五郎岳まではひたすら上り。よくねむれなかったせいか今日はやたらに休息してしまう。黒部五郎岳を見上げていたらおばちゃんにチョコレートをもらうが、食ってしばらくしたら鼻血がでてしまった。こりゃあビタミンが不足しとるんとちゃうかあとあせる。黒部五郎岳へは前を歩く某山岳部?の掛け声をすこしもらいながら一歩一歩足を進める。登頂後,尾根をくだるか、カールの中を下るか迷うが楽そうなカールを選ぶ。途中五郎のカールで抹茶かき氷を食べる。
黒部五郎岳の小屋はあたらしい小屋が横に立てられていた。ここでみかんの缶詰を購入し、ビタミン?を補給したつもりになる。つぎの目標を槍ヶ岳をに定め早めに就寝。
北ノ俣岳へ向かう 快晴の稜線をバックに なんとか黒部五郎岳の頂上へ
五郎のカールで抹茶かき氷を食べた

<8月7日>
朝眼がさめると4時半だ。ぎゃー!寝坊したぁぁ。あわててガーリック雑炊をかきこむ。小屋のトイレで●●●をしようとするがインディアン風のジーパンキスリング男がなかなかでてこないので悶絶する。
三俣蓮華岳へののぼりは意外と急である。途中で下ばかり見ていたら木で頭をぶつけ、たんこぶをつくってしまった。稜線にあがると遠方がすこしかすんで見える。
稜線をゆっくりと登る 鷲羽岳の勇姿 双六岳の広大な尾根
双六岳の尾根は航空母艦をイメージさせる。尾根を下ると北アルプスらしい赤い大きな小屋が見える。腹が減ったので牛丼を注文する。レトルトをあたためるのが見えたが文句をいえる筋合いではない。おいしくいただきました。
今日はなんだか頭と喉が痛いので少しシュラフに入り仮眠をするとにする。眼がさめると不思議と痛みは消えていた。8時ごろ就寝したが、夜に雨が少し降った。

<8月8日>
今日はいよいよ槍ヶ岳をめざす日である。テントから顔を出すと既にヘッドランプをつけた登山達が行動を開始している。すこし霞がかかっているが遠くに槍ヶ岳がみえる。西鎌尾根は岩稜というよりも岩のくずの上を歩く感じでいやらしい。途中からガスがでてきて槍ヶ岳は見えなくなる。西鎌尾根の最後の上りをふんばると意外なほどあっさりと小屋の横に出た。視界がきかなかったせいか、「あれ?もう?」という感じであった。
槍ヶ岳を目指し縦走 最後の登り 槍ヶ岳山荘

テントサイトはNO.1であった。テント設営後槍ヶ岳へ登頂しこれまでの縦走を振りかえる。その気になればやれるもんだと実感した。
さて、またもや今日も腹が減ったので槍ヶ岳山荘で牛丼(1000円)を注文し、空腹を満たす。幸せな気分である。2時ごろ雲行きがあやしくなり雨が降ってきた。
ガス沸くなかで最後のピーク槍ヶ岳へ 西鎌尾根を越える朝の雲 笠が岳遠望

<8月9日>
3時頃眼が覚める。雑炊を作り5時30分下山開始。しばらくして振りかえると槍ヶ岳がその姿をあらわにしている。いつ見ても人をを惹きつける山容だ。今日は下るだけということもあり、すでに景色は眼中になく代わりに頭に思い浮かべるのは下山したら風呂はどうしようか、何を食べようかということだけである。横尾までくだってくるともはやすれちがってもあいさつをしない世界である。
ひたすら下をみながら肩に食い込む荷に耐え最後の目的地上高地についに到着した。上高地のシンボル河童橋まで行くがそこは観光客で埋め尽くされ橋も今にも落ちそう感じであった。仕方なく手前で記念写真を撮ってもらい、心の中でガッツポーズをして上高地を後にした。

松本でオカメの湯に入って一週間分の垢をきれいに落とす。周りを見るとおなじ人種のお方がたくさんいるいる。こりゃ今日の風呂掃除は大変だ。さっぱりしたあと、お約束の店「たくま」に行く。「ミゾレとんかつ定食」と「野菜サラダ」を注文。店の親父に「定食にサラダついてるけどほんまに食べれる?」と聞かれたが自信を持って「大丈夫です。」と答える。
心も体も大満足で今回の山行を終えることが出来た。
 



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