六甲地獄谷
2006.02.18
何度も通っているのに道を踏み外して迷走・・・

 2月18日

ひさしぶりにゆっくり休める土日がやってきた。土曜日は予報をみると快晴。どこかに行きたいなあと思いつつも明日を気にしなくてもよい金曜日の夜の開放感からついつい2時くらいまでのんびりしてしまった。

朝目覚めるとすでに9時。外は快晴。あたた。ど毎回このパターンである。嫁さんに「山にひとりで行きたい」と申し出てぶーぶー言われながらも(笑)承認をもらい、さっそくディパックに荷物を詰める。トイレットペーパーやヘッドランプ、防寒着も詰めた。今日のメシは最初から決めていた。出張先の小倉駅で買った「堅パン」である。山はできれば人にいないところに行きたかったので何度か行ったことのある六甲の地獄谷を選ぶ。

11時ごろに自宅を出発。左足の調子が悪くなってから歩き出すとすぐに足が痛み出す。もうこればかりはどうしようもない。体の調子に合わせるしかないなあとにかくゆっくり歩く。阪急芦屋川まで30分ほどで到着した。ここから高座の滝まではひたすら上り。高級住宅地の後を2箇所ほど造成していた。すごい敷地スペースである。マンションが建つのかなあ。景観だけ考えると個人的にはマンションは嫌いだけど、収益を考えるとマンションになってしまうんだろなー。昭和初期くらいに建てられた豪邸が壊されていく様はなんだかさみしくもある。

高座の滝をすぎてすぐに地獄谷に下りた。予想どおり誰もいない。ラッキー。山懐に抱かれた静かな山旅のはじまりはじまり。記憶の糸をたぐりながら、ゆっくりと歩く。滝は基本的に直登する。左足のふんばりが効かないため、おもわぬところで、左足を滑らせることが2回ほどあった。これは気をつけなければならんなあと実感。

谷を流れる水のせせらぎに心洗われる。なんというかただすぎていく時間を気にもせずに水面を見つめていた。山は人を詩人にさせるというのは本当だ。集団で行くよりも一人のほうが普段見落としているものを見つけ、そしてそれを受け止め、さらに内面へとりこむことが出来るのが、単独行者の喜びのひとつなのだろう。
 

谷のすこし明るいところに移動して早速昼食。といっても今回は堅パンなので行動食というほうがただしいかな。袋を開けると堅いパンのはずなのに全部割れていた(爆)なんじゃそりゃー!と思ったがしっかり「自然素材なので割れることがあります」と補足が書いてあった。さっそくかじってみる。たしかに堅い(笑)味はどこかでたべたことがある懐かしい味。ほんのりと甘味がある。小さくして口の中で溶かして食べてみる。なるほど少量で意外や満腹感がある。今日は紅茶を持ってきたのでこれもちょうど合う。今日はこの堅パンだけで乗り切ろうと思っていたが案外いけそうだ。

堅パンを食べたあと再び谷を歩き出す。小便滝をすぎると分岐にぶつかった。ああ、もうこの先で終わりだと思った。これが間違いだった。帰宅して調べてみたら、完全に高座谷の記憶と勘違いしていたのである。あまりにも道が似ていたので、そのまま谷を歩いていった。進むに連れてもちろん道は無くなる。
見たこともない滝が出てくる。はて、こんなのあったかなあと思いつつも滝の右側を直登する。念のため引き返せるように地形の特徴を頭に叩き込込んだ。

 

やがて道も完全に無くなった。地図を広げてみる。なるほどさっきのところがやっぱり分岐だったんだと気づく。冒険気分ですこしどきどきする。この冒険心がいけなかったようだ。ショートカットできるかなと支谷をやぶをこぎながら進んでみた。上の右の写真がその道である。ひさびさのやぶこぎである。方向は間違っていない。しかしやぶがひどい。高台にあがるとロックガーデンの白い岩が見えた。このやぶを突破すればあの下に出られるなと考えたが・・・左足をなんども滑らせたことを思い出した。心臓もバクバクしている。これは冷静な状態ではない。何かの警告じゃないかなと考えてとにかくさきほどの分岐まで引き返そうと深呼吸をし、決意した。いまこうして冷静に考えてみると本当に吸い寄せられるように谷に引き込まれたような気がする。

分岐に戻り、足を進めるとロックガーデンに出た。白い砂をしっかりと踏みしめて稜線にあがる。暗い谷から一変して明るく青い空と白い砂礫がお出迎え。ああ、やっと抜け出せたと安堵した。木々は春を迎える準備を着々としていた。

砂礫の山の上で、ロックガーデンの景色を十二分に楽しむ。ここからの景色が一番好きだ。稜線からはおばさんのしゃべり声が風に乗ってときどき聞こえてくる。鉄塔のあたりがちょうど風吹岩である。


 

体が冷えるまで展望を楽しんだので、崩壊したピラーロックを見て縦走路に戻った。風吹岩はここから目と鼻の先。上から中高年のおっさんたちの話声が聞こえてくる。静かな山旅もここでお終いと思い、すれちがうオヤジに挨拶する。こんにちは〜と挨拶をすると向こうも「こんにちは」と返事をしてくれた。そのときである。

「ぷぅ〜」

げ、おなら!最低!と思いおもわず目を伏せた。

オヤジは「おっと失礼!」と言ったまではよかったが、続けて

「プリ!」「ぶりっ!」

と明らかに水気を含んだおならを2発発射したのである。「・・・」である。まったく風吹岩がおなら吹き岩になってしまった。最低!最低!くそー!下品な奴め!!!謝ればええちゅうもんやない!と叫びたかったが、時すでに遅し。オヤジはゆうゆうと下山していった。

ネタに使えるなと気持ちを切り替えて、こちらも眺望を楽しんだあと下山する。それにしても本当に山は中高年登山者ばかり。高座の滝で一休みをしたが、ここも中高年登山者のサロン状態になっていた。うまそうにビールを飲みながらおでんをつついている。僕ですら「あ、若い子がおる」と言われてしまう状態。もう四捨五入すれば40のおっさんなんですけどねえ。

ひさびさに登山をして汗も冷汗もかき、反省もしきりであった。自分の体、とくに左足の状態も知ることも出来、収穫はたっぷりあった。が、すれちがいざまのオナラだけはやっぱり止めて頂きたいというのが僕からの中高年登山者サマへのお願いでアリマス、はい。

     
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